正直なこと

僕は、「正直さ」が最後のとりでであるような気がしている。それはいついかなるときも嘘をつかないとか、演技をしないとか、そういうことではない。ただ、「正直に話そう」と望めば、話すべき「正直なこと」を自分の中にちゃんと持っている、という意味である。

自分の中にある、他人には言えないようなこと。それらをうかつに口に出したら人から軽蔑されるかもしれない、非難されるかもしれない。しかしそれらは、他人には言えないというだけで、多くの人が少なからず頭の中に持っているようなことだったりする。それをあたかも「自分はそんなひどい・汚い考えは持っていない」かのようにふるまい隠蔽することは、最終的にその人自身を苦しめることになる。

「ひどい・汚い考え」も「きれいな考え」も全部含めた「正直なこと」を、僕は自分の中にちゃんと持っていたいと思う。自覚しておきたいと思う。話すべきときにそれを話して、他人と共有できるような「正直なこと」を、一人きりでいる時間にしっかりと用意しておきたいと思う。そういう「正直さ」だけが人と人との結びつきを作ってくれるのだと、僕は信じているからである。