『犬は吠えるがキャラバンは進む』を聴くと、半年くらい前それを聴きながらたくさん夜の東京を歩き回った記憶が蘇って、半年しか経ってないのに、すでに懐かしい気持ちになってしまう。

ここ二年くらいの間だが、僕はものすごいスピードで変化しているため、半年前でも三年前(高校入学して卒業できるほどの期間)みたいな懐かしさを感じる。二年前だともう十二年前(小学校入学してから高校卒業するまでの期間)みたいな懐かしさを感じる。あらゆることを考えては考え終わり、考えては考え終わりを繰り返しているうちに、ほとんど僕は別人になった。

この『犬は吠えるがキャラバンは進む』は、実に「渋い」アルバムである(どこかで誰かがそう書いていたような)。そして「思想的」である。ところで、ジョン・レノンの『ジョンの魂』というアルバムもまた「渋い」(これもどこかでそう書いてあったような)。そしてやはり「思想的」である。どちらもほとんど装飾のないシンプルな音だから、一回聴いただけで分かりやすく「いい!」とは思わないだろうが、長い目で見れば一番たくさん聴くことになるタイプのアルバムである。そしてこの二つには、バンドを解散してソロになってから出した最初のアルバムである、という共通点がある。

この二つのアルバムは、良いこともあれば悪いこともある「人生」を平均化したとき、それと最も近い「肯定と否定のバランス」を表現している、心地の良い、「良い」アルバムだと思う。(『ジョンの魂』の方は卑屈な感じが多少あるから、ちょっと否定的要素が強いかもしれない。『イマジン』だともう少し明るくなる。)