部屋にこもる

世の中にはすでに
たくさんの言葉があふれている
なにをいってもそのどれかになってしまい
僕は黙る

言葉はこころを
ざっくりとしか表現しない
それはピザを切り分けるようでしかなくて
僕は黙る

たくさんの人たちが
湯水のように言葉をたれ流し
たくさんの「正しさ」を並べ立てるのを聞く
僕は黙る

黙ってくれないか
自分にいう
くだらないことをいうくらいなら
黙ってしまわないか
自分にいう
どこかで聞いたこと
思ってもいないこと
偉そうに口にしやがる壊れたラジオと
おんなじになりたくなければどうか
黙ってしまえ

黙ると僕はいなくなる
それは部屋にこもっているようなものである
誰にも知られない
誰にも気づかれない
ひっそりとしていて
じめじめとしていて
暗いニヒリズムのたちこめる
部屋