人生の色合い

暗闇の中か、宇宙か、砂漠か分からないけれど、そういう「何もないところ」の中に一人きりで立たされている、というのが、もともとの人間の状態である。「何もないところ」とは、現に僕たちが生きているこの世界のことであったり、自分自身のことであったり、人間一般のことであったりする。

その場所で僕たちは、解決されることのないあまりにもたくさんの疑問に押し寄せられ、混乱し、怯えている。この混乱と怯えは誰のせいでもない、もともとあるものである。しかしそれが分からない人たちは「それらは隣にいる人のせいである」と思い込んで、意味なく憎悪し傷つけたりするのだ。



人生の多くの時間、僕たちは「何もないところ」で混乱し怯えているか、あるいは、たくさんの疑問が湧いてこないくらい他のことに時間とエネルギーを費やすことによって問題を先延ばしにするかしている。

それでもときどき(人生のうち数回)は、そういった疑問をすべて燃やし尽くすくらい強烈な喜び(太陽みたいなもの、快楽?)がもたらされる瞬間があって、そのときだけ「何もないところ」にいる自分をすっかり忘れることができる。

そして最後、ふとしたときなどに、それまでに味わった「『何もないところ』に立たされている混乱や怯え」と「すべてを燃やし尽くすくらい強烈な喜び」のふたつの体験を同時に思い出して、懐かしみ、この世界と自分自身に対しての「愛着」を感じることができるようになる。「すべてよし」と思うことができるのだ。それは強烈な喜びとは違って、静かな日常の中で感じることのできる幸福感である。