権力あるいは暴力は、人目につきやすく、そのくせ人間ひとりを支配することすら容易ではない。しかしその一方で、愛の謙虚さは、誰からも気づかれなくとも、他のどんな強い力よりもはるかに強く他者に影響を与えてしまうことができる。そういった謙虚さは、その性質上、どこまでも人目につかないことを望んでいるが、それと同時に、自らの影響力をちゃんと知ってもいるのである。

「愛の謙虚さは恐ろしい力である。すべての強い力の中でも、これにならぶものは何一つないほど、強い力なのだ」と考えるとき、その思想の中にはひそかな情熱があるし、全世界を征服しようというかくれた野心すらある。こういった博愛精神は、「年寄りにありがちな優しさ」なんてものでは決してない。それは、せっかく生まれてきたのだから、人生をすべて味わい尽くしてやろう、と渇望する若者をも満足させるものである。

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