あなたの尊敬している人物が、あなたを受け容れ、愛していると同時に、あなたが軽蔑している他の人間のことをも、あなたを愛するのとまったくおなじように受け容れ、愛しているといった場合について考えてみる。その後のあなたの反応は、次の二通り。

 ① あなたは尊敬している人物について、軽蔑に値するはずのあんなやつをも愛してしまうのであれば、自分を愛してくれていることにも特別な根拠はないのだろう、と思うようになる。そして、そのことによって悩み、苦しみ、考え込み、ついには幻滅さえしてしまう。どうしてあの人のことを尊敬していたのだろう、自分には見る目がなかったのだろうか、と。

 ② あなたは軽蔑している人間について、自分の尊敬するあの人が受け容れ、愛しているとなれば、実際はそれほど悪いやつではないのかもしれない、と思うようになる。そして、その人のことを徐々に受け容れるようになり、ついにはすっかり愛してしまう。それはまるで、尊敬している人物の愛を媒介として、その人物の傘にいる人たちみんなを無条件に愛してしまうかのようである。

 これらの現象について、あまり上手に書くことができないのが、とても残念である。すっとばして結論じみたことを述べてしまうと、このようになる。あらゆる人間を愛する人物のことを心から尊敬していれば、その人物の愛を媒介として、僕もあらゆる人間を心から愛することができるようになるだろうということ、さらには、自分を心から尊敬してくれる人がもしいるとすれば、僕は、その尊敬の気持ちを、その人があらゆる人間を心から愛するようになることのために使いたいということ、これである。

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