考えなければならないこと、解決しなければならない問題なら、もちろん無数にあるのだけど、その中でもとりわけ重要なこと、すなわち、まずそこから始めなければならないような、あらゆるものに先立つ第一の問題とは、いったい何だろうか? そう問われれば、おそらく、それは善悪の問題である、と答えるほかないように思う。神様はいるのかいないのか、いるのであればそれはどういった神様か、といった問題は、現代の僕たちにはあまりにもなじみが薄い。しかし、善悪ということならまだ真剣に扱われているし、そんなものを考える必要はない、と断言するわけにもいかなくなってくる。なぜなら、もし「善悪などない」ということになってしまえば、悲しいかな、僕たちに残されているものは、単なる「個人の欲求」であるとか、せいぜい「一部の人間にとっての利害」といったものでしかないだろうが、そんなのは容易に認められる事態ではないからである。

コメント