年老いた乳母が彼の部屋へ入って行く。「ごめんくださいまし、お坊ちゃま、聖像の前にお灯明をあげさせていただけましょうか」以前だったらそんなことを許すどころか、吹き消してさえいた兄が、こんなふうに言いはじめる。「どうぞ、あげておくれ、灯しておくれ、以前はおまえたちのすることをやめさせたりして、ほんとうに罰当りなことをしたねえ。おまえがお灯明をあげながらお祈りをすれば、ぼくはそのおまえの姿に喜びをおぼえながらお祈りをしよう。そうすれば、二人がおなじ神さまにお祈りをすることになる」
(ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』)

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