他人を赦すことができたらどんなにいいだろう? もう一生会うことはないからといって、すべてが終わったわけではないのである。自分の心の中でその人と和解するができれば、どんなに気持ちが安らかになることだろう? どうやったら生きていけるのか、どうすれば人から愛してもらえるか、これ以上いったい何をすればいいのかも分からず、苦しんできたような人間に対して(じっさい神様はこの一人の人間にこれ以上の何を求めているのだろう)、どうして私たちは憎しみを抱くことができるのだろうか? この行き場のない怒りはどうすればいいのか? 赦すと赦さないでゆれ動いているうちに、それはほとんど嘆きのようなものに変わっていき、ついには「どうか私に赦させてください」という懇願にまでなってしまう。しかし一方では、「この恨みは一生忘れてやるもんか」という声も聞こえないではない。私たちの中のいったい誰が何を言わせているのか? それを聞いている私たちにどうしろというのか?

コメント