とても興味深い英語の決まり文句がある。それは “There but for the grace of God go I” というもので、直訳すると「神の恵みがなければ私がそうなっていた」である。俗には、自分でなくてよかった、くらいの意味で用いられる。この決まり文句は、十六世紀のイギリスの聖職者、ジョン・ブラドフォード(叛逆罪で火刑に処された)が、刑場に引かれる犯罪者を見て叫んだとされる言葉 “But for the grace of God there goes John Bradford !(神の恵みがなければジョン・ブラドフォードがそうなっていた!)” を、その由来としているらしい。この言葉の中にどれほどの真理が含まれていることか! あるいは、信仰を持たない人であればこう言うかもしれない。「サイコロをふり直して、今度は違う目が出れば、私がそうなることだってあるかもしれない!」。

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