最近の読書/三島由紀夫について

 ここ一、ニヶ月ほど(?)あまり集中して本を読むことができなかったのですが、ようやく先日、三島由紀夫なら読めそうだ、ということに気がつきました。そんなこんなで『鏡子の家』を読み終えて、いまは『美しい星』を読んでいる最中なのです(過去には『永すぎた春』と『夏子の冒険』を読んだことがあるだけでした。チャーミングなヒロインが活躍する小説たちです)。

 この人の思想についてはよく知りません。どうやら右らしい、しかもそれで自殺までしたらしい、ということは知っています。三島由紀夫の政治思想だけを切りとるとしたら、まったく何の親しみも感じない、というのが正直なところです。それで私はいままで三島由紀夫を少し敬遠していたのでした(私自身はどちらかといえば左寄りだと感じています。そう確信していた時期もあります。もっとも、こういったことが馬鹿げたことではないとすれば、ですが……)。

 ただ、思想ではない、三島由紀夫とはどういう人間なのか、という部分をあれこれ調べたり考えたりしているうちに、思いのほか彼のことが好きになってしまった自分がいます。とても人間的で、心優しい人なんだなあ、という印象を受けました。それに正直な人だとも思いました。

 心優しい怪獣、という表現が似合っていると(勝手ながら)思います。頭がすごく良いので、たくさんの批判を浴びつつも、そういった批判はすでに一人のときに考えたことがある、だけどそれらに十分な反論をすることが自分にはできない、ということもまた重々承知している。それでも何か人には言えないようなことのため、言ったら嘲笑を浴びるかもしれないけれど自分にとっては一等大切なもののために、どうしても自分の信念を曲げるわけにはいかないでいる。たった一人きりで自分の絶望から脱しようともがいている。それはとても苦しいことなのだけど、自分の苦しみを決して外には出すまいとしている。……そんな感じの人なのかなと思います。

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