これはどうせ再び読むことになるだろうから、いまはさっさと読み切ってしまいたい。ちょっと難しいところはあるけれど、すぐ理解しようとしても仕方がない。そう思いながら、自分としてはすごい速さで、アイリス・マードックの『鐘』という小説を読み終えました。とても良かったです! そして、これから読み返していくうちに、もっと良くなっていくことでしょう! 私はドストエフスキーの小説を読んでからというもの、ほかの作家の本を読んでみても、しっくり来ないことが多かったのです。感性が貧しくなってしまったのかと思いました。

 ドストエフスキーとマードックの小説に共通しているのは、倫理の問題を扱っているということ、それでいてまったく押し付けがましくないということです。どちらの作家も、人間についてとても深い分析をしているのですが、とはいえ、現実を描写することを第一にしているように私には思われます。起こる出来事、登場人物の心の動きは、作家の恣意的なものではなくてただあるものだという感じがします。だけど、それをどのように描写するか、ここに作家のものの見方が反映されており、思想うんぬんよりも、この世界に対する愛着がかいま見える気がします。

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