自分を不幸だと思っている人間は、じっさい不幸だから、自分を不幸だと判断しているのである。あるいは? 自分を不幸だと思うこと(さらにはそれを人に言うこと)によって何らかの利益が自分にあると見越しているから、そう判断しているのかもしれない。このような心の二面性は、不幸うんぬんにかぎった話ではない。一事が万事に当てはまる。私たちが心の中で、そうとは意識せず自分自身をだまくらかすそのやり方は、あまりにも巧妙なので(「人の内心を嗅ぎまわるスパイ」とはよく言ったものだ)、もう何一つ断定しない方が良いくらいである。

 もっともこういった、人間の心の中に土足で入り込むような意地の悪い分析は、他人に対してするべきではない。自己批判のためにするのである。もし他人に対してそれをするのであれば、その人の内心がたとえどうであれ、それを受け入れるような愛情をもってしなければならない。意地の悪い心理学者みたいになってはいけない。それに結局のところ、人間の心の中がどうなっているのかは私たちには隠されているのだし、何一つ断定する資格はないのである。もししたいのであれば、どのような判断がより愛情に満ちているかを考えてみることである。

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