あの出来事があって以来、少年の内部では何もかもが複雑になってしまった。目に見える景色は以前とまったく変わりないし、世界は依然としてその歩みを進めているのだが。まわりの人々にしても同じことで、申し合わせたかのように何事もなかった顔をしている。もちろん、みんな出来事があったことは覚えているのだが、その意味を知らないか、あるいは知らないふりをしているのである。
 しかし、まさにそのことが、かえって少年を混乱させたのである。この心の動揺、はげしい衝撃を共有することのできる大人がいないという孤独感、そしていつまでもその出来事の呪縛に囚われている自分は、もしかしたらどこか不潔で間違った存在なのではないかという疑念、これらのものが彼をひどく苦しめた。少年はまだ本質的には子供であったので、物事を客観的に見ることができなかった。そこで彼は、まわりの人々ではなく自分にこそ問題があるのだと思い込み、自分自身を責めたのである。これらはすべて大人たちの知らない場所、少年の心の内奥で起こったことである。

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