聖像の前で

あなたお一人が悪い
だってそうでしょう
そもそもの始まりを
考えてもご覧なさい
初めは何も無かった
ぴたりと静止していたこの世界に
最初の一撃をくらわしたのは
あなたです
その一撃がなかったら
どこにも苦しみはなかったし
人が人を傷つけることも
それを罰することも
何にも無かった
だってそうでしょう
あなたお一人が悪いんです
みんな憎んでいます
自分を隣の人をこの世界を
憎んでいます
でもみんな間違っています
本当に憎むべきは
すべての原因であるあなた
あなたお一人だけですから

せめてそのお顔に
唾を吐いてわたしの憂さを
晴らすことくらいは
どうかお許しを
さすればわたしは
自分を隣の人をこの世界を
少しは愛することができる
気がしますから

いいえ本当の本当は
何もかもわたし一人が
悪いんです……
ああ何も言わないでください!
ちゃんと分かっていますから
逃げも隠れも背けもしません
わたしはわたし一人を憎んで
隣の人をこの世界を
愛するべきなんです

いや
あー
できもしないこと
思ってもいないことを
言ってみたとて仕方がない
意地を張って善人思考を
頭に植えてみたとて
根を張らない
本当の瞬間が来たら
ナイフと衝動で
お終いなのだ

ふははは
どうしようもない
どうしようも……
ああでも
ああ
これらすべてを
優しく包んでください!

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