観念

観念はしぶとく残る。
圧政により思考の自由が失われ、
人びとは消され、誰も何も語らなくなっても、
観念はしぶとく残る。
目に見えないものは必ず生き残る。
書物を燃やし、人びとを磔にし、
物語も伝承ももはや聞かれず、
目に見えるものすべてを
この世界から一掃しても、
目に見えない観念は必ず生き残る。
支配者の思いもよらぬ抜け穴が
必ずあって、ほんの一つの種子でも
細胞でもミームでも
どこかに残れば、自己増殖を繰り返し、
いずれまた時代の表舞台に現れる。
隠れているもので、あらわにならない
ものはない。暗い時代、
観念は地下に潜んでおり、
自分の出番を辛抱強く待っている。

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