善悪の学問とは、自己反省の学問である。ある人の善悪は、その人が拠り所とする理論やものの見方によって測られるのではない。その人が、その人自身を世界のどこに位置づけるかによって測られるのである。自分のことを棚に上げる(自己を例外として扱う)人が、どんなにぬかりない理論を語ったところで、何の意味もない。これは「説得力に欠ける」うんぬんの問題ではない。善悪という概念が、そもそも、自己ぬきでは成立しない概念だからである。善-悪の二項対立は、利他-利己の二項対立と同義だからである。

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