いつも「大衆は愚かである」式の説明に逃げ込んでいる自称「賢い人」は、その「賢さ」がどこからやって来るのかについて、真剣に考えたことがあるのだろうか。まさか、自分で生み出した、自分由来の「賢さ」であるとは言うまい。また、その「賢さ」は誰が評価してそう決めていると主張するのか。まさか、神さまだ、などとは言うまい。プラトンとは言わず、ソクラテスからやり直した方がいい。たちの悪い心理学者の手にかかれば、ソクラテスよりももっと残酷に「負け犬の遠吠えだ」と片づけられてしまうことになる。

 自分は善人である、と素朴に思い込んでいる人も同様である。天国に入ることができるのは、自らそれに値すると思わない者だけである。天国とは「真正な評価」の比喩表現である。

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