他人への批判の行きつくところは、つねに自分への批判である。強い感情がともなっていれば特にそうだ。これは経験的に私がそう思うだけではなく、心理学的に避けられない事実である。たとえば、そういった他人への批判的心情は、自分のコンプレックス、劣等感、嫉妬心の裏返しかもしれない。もちろん、そうではないかもしれないが、そうである可能性を否定できない以上、批判の妥当性は失われてしまう。「おれは自分の立場を守るために他人を批判しているだけではないか?」という疑念を完全に払拭することは不可能である。自己防衛のために心が用意した結論ありきで、ものを考えたのではないか? 自分の負の感情を正当化するために、理性が不正利用されたのではないか? これらの疑問に「そうではない」と答えることは不可能である。心の真実は誰にも分からないし、当人には一層分からないからである。

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