どんなに、もの知りで、賢く、流暢で、言葉の使い方が上手でも、まったく信用するに値しない文章というのがある。その特徴を言語化することは難しい。というか、そういう文章に出くわした時の私の激しい嫌悪感を表現することは難しい(要するに、これは個人的な感情の話、私事である)。一言で言えば、ペテンだ、詭弁だ、ということになる。真理を探求したいのではなく、自分を宣伝したいだけ、自分を正当化したいだけの嘘つきが書いた文章である。目的を達成するための手段としてならどんな言葉の出し惜しみもしない。心で自分がどう思っているかの吟味がなく、したがって、自分が嘘をついているかどうかを真面目に考えたこともない。「わたしは、肚で思っていることと、口に出していうことが違うような男は、冥府の門と同様嫌いなのだ。だがわたしは、自分が一番良いと思う通りに話す」(『イリアス』第九歌のアキレウス)。

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