主体≠自由意志

 主体性とは、「〈自分の内にあるもの〉を表出する」という、ある種の方向性(エネルゲイア)のことである。自由意志を否定することは、「主体/客体」「行為/出来事」「ヒト/モノ」の区別を否定することでは必ずしもない。モノは「〈自分の内にあるもの〉を表出したい」という欲求に駆られたりはしない。ヒトはそうした欲求に駆られ、行為によってそれを満足させようとする。一方、この〈自分の内にあるもの〉は、自分のコントロールの範囲外(因果律か運か)からやって来るものである。ヒトには「〈自分の内にあるもの〉を任意に選択する能力」(=自由意志)などないし、主体の説明にそれらが必要というわけでもない。

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